前回の記事でも書いたが、NZ移民局はそのためのツール、The Skilled Migrant Category Points Indicatorというものを公開している。Web上で質問に答えると自分のポイントが分かるというやつだが、この質問に答えるためにはいろいろと情報を調べあげて自分のステータスを確認しなくてはならない。
質問はいくつかの分野に分かれていて、それぞれ
- Skilled Employment(スキルが必要な雇用)
- Qualifications(学歴)
- Relevant Work Experience(関連のある職歴)
- Age(年齢)
- Other Family(家族がNZにいるか)
- Partner(パートナー)
その辺の情報は移民局がWebで公開していて、Points Indicatorの各質問から張ってあるリンクを辿ると参照できる。ここでも順次紹介するけど、見つけたら直リンクをブックマークしておくとよい。
ここでは特にポイント積み上げの要となる、職歴関係の分かりにくい部分についてまとめる。では移民局の膨大な情報の海に、レッツラゴー!
ゴー! |
■NZで働いてる?Skilled Employmentって?
Points Indicatorで最初に登場する質問はSkilled Employmentに関するものだ。これは自分の雇用状況に関するもので、NZ国内で、Skilled Employmentで雇用されていると認められると50とか60といった大きなポイントをもらうことができる。
ではこのSkilled Employmentとは具体的に何なのか。これは移民マニュアルの中の
SM7.10 Skilled Employmentに説明があり、だいたいで訳すと「関連のある(relevant)、学歴もしくは職歴もしくはその両方を通して得られたスキルを必要とする仕事」とある。
このrelevant(関連のある)というのがどういう意味かというと、NZでやっている仕事が、自分のそれ以前の学歴や職歴と関係しているか、ということになる。また、職務経験は5年以上でないとSkilledと認定されないようだ。
これは同じページの「SM7.10.1 Assessment of whether employment is skilled」というセクションにその基準が定義してある。厳密に定義するために却ってわかりにくくなっているが、おおまかに分ければ2つパターンが想定されているように見受けられる。
1つは学卒後すぐにNZで働き出した場合。その場合、
- NZでやっている仕事に関係する学歴を持っている
もう1つは学卒後しばらく日本で働いて、NZの同じような仕事に転職した場合。この場合は、
- NZでやっている仕事に関係する職務経験があるか
- 職歴は5年以上あるのか
よって、NZでの仕事がITだとすると、その仕事をする以前に情報系の大学を出ていたり、5年のIT系の職務経験があればSkilledとして認定されポイントが付くことになる。
なお、どんな職種がSkilledなのかは以下で検索できる。
Skill shortage list checkこれはNZに不足しているスキルの検索なのだが、ついでにそれがSkilledな職種にリストされているかも調べられる。自分の職歴がITなら、ICTとかprogrammerと入力すると、それらしい職種がサジェストされるので、良さそうなのを選んで検索すればいい。
以下に全Skilled職種のリストもある。
List of Skilled Occupations
■Analyst Programmerって?ANZSCOで職種の定義を調べてみる
上に挙げたSkilled Occupationsのリストでは肩書き名だけがあって、それが実際に自分の経験した職種と同じものを指すのか分からないときがある。
例えばプログラマだとAnalyst ProgrammerとかDeveloper Programmerとかいろいろあって、どれが自分の職種にあたるのか分からない場合、きちんとその定義を確認する必要がある。
このSkilled職種の定義はANZSCOというものに書いてある。ANZSCOはThe Australian and New Zealand Standard Classification of Occupationsの略で、オーストラリアとNZの職種の標準定義になる。
ANZSCOここでAnalyst Programmerを調べると、要件定義からメンテナンスまでトータルな経験がある職種のことを指す。日本だとSEというのに近いと思う。これがDeveloper Programmerだと、どうも仕様書をテクニカルなデザインやプログラムに落とす、日本だと昔のメーカー子会社でやるような職種のようだ。
またプログラマ関係の職種は前提として、ANZSCOの該当セクションに以下のように定義されている。
Most occupations in this unit group have a level of skill commensurate with a bachelor degree or higher qualification. At least five years of relevant experience and/or relevant vendor certification may substitute for the formal qualification. In some instances relevant experience and/or on-the-job training may be required in addition to the formal qualification (ANZSCO Skill Level 1).
よって何らかのプログラマのスキルを持つと認定されるためには、大卒かそれ以上の学歴が必要。5年以上の職務経験やベンダによるサーティフィケートがあるとその代わりになる。そして場合により、学歴と職務経験両方が必要、ということが分かる。
そんな感じで、自分の経験を照らしあわせて、それがSkilled職歴なのかどうか確認できる。ANZSCOはその最終確認先である。■過去の職歴は学歴とRelevant!
NZで雇用されていなくても、申請時点以前の職務経験そのものもポイントになる。ただしそれは上述のSkilledな職種でなければならない。
これはPoints IndicatorのRelevant Work Experienceのセクションにあたるのだが、ここでRelevantとあるのは、学歴と職務経験との関連のことを指す。
移民局のwork experienceに関する用語説明を読んでみよう。
For your work experience to be recognised, it must be relevant to your recognised qualification or relevant to your offer of skilled employment (or current skilled employment) in New Zealand.
it must be relevant to your recognised qualificationとある通り、職歴は認定された学歴と関連していなければならない。
■非常に不足している職種も学歴とRelevant!
また、自分のスキルがNZで非常に不足しているものだと認められると、経験年数に応じてボーナスポイントがもらえる。
自分の職歴が「非常に不足している」かは、先にも挙げたSkill shortage list checkで検索できる。
さらに不足している職種の詳細は Long Term Skill Shortage List (LTSSL)と呼ばれるものにまとめられている。
Long Term Skill Shortage Listこの長大なリストに全ての「不足している職種」の定義や、ボーナスポイントがもらえる条件が書いてあるが、どんな職種であれ大抵は
- Bachelor(大卒)
- 卒業後のRelevantな、3年以上の職歴
学歴と関連する(relevant)、卒業後の(post-qualification)、というところが一つのポイントで、学歴と関係ない仕事に就き、キャリアを積んだ後で関連の大学院に通ったとしても、その職歴の年数はカウントされないことになる。
■Relevantに気をつけよう
そんなわけで、この職歴に常につきまとうRelevantという条件は、大学の勉強と関係ない仕事に就くことが珍しくない日本人には意外なハードルであろう。
例を挙げると、経済学部をこれから卒業する人がNZでITの仕事したい!と思っても、永住権を視野に入れるならお薦めできないことになる。Skilled Employmentのポイントにならないからだ。
同じように経済学部卒でITの仕事してました、みたいな人は、Relevant Work Experienceのポイントが貰えるか怪しくなってくる。
怪しいだけで絶対ムリと言えないのは、Work experienceの定義による。読んでみると分かるが、基本的に学歴と職歴は一貫してないとダメだが、他にも認められる方法があると書いてある。これについてはまた別途まとめたい。
そして「非常に不足している分野」となると、こういう抜け道が見当たらない。ITなどは該当の分野になるにも関わらず、経済学部卒とかだとボーナスポイントが貰えない可能性が高いように思われる。
もし学歴・職歴がRelevantでなくても「非常に不足している分野」ポイントを付ける方法があったら教えて下さいm(_ _)m
最後にもう一つ分かりにくいワード、Comparableについて。職歴Relevant Work Experienceの質問に、
Was the work experience gained in a comparable labour market or an area of absolute skills shortage?というのがある。
訳すと「あなたの職務経験は、comparable labour marketで得たものか、あるいはabsolute skills shortage分野のものですか?」となる。
この comparable labour marketとは何かというと、NZの労働市場に匹敵する労働市場ということになる。要するにNZで要求されるようなスキルが必要とされない国でIT職でした、と言われても、ひょっとしてそれってExcel使えるとかそんなレベルなんじゃないの?というところを疑っている、ということなのだろう。
では日本はどうなのかということなのだが、Comparable labour marketのリストに日本は入っており、大丈夫である。
↓で確認できる。
Comparable labour marketまた上の質問にabsolute skills shortageとあるように、Comparableでなくても、「非常に不足している分野のスキル」があればポイントが認められる。ITはその分野の一つになる。↓の20.が詳しい。
ニュージーランドの国家資格と永住権ポイントただ、上に書いたとおり日本の職歴はNZとComparableとなっているので、こっちに認定されなくてもたぶん大丈夫だ。
■ポイントを確認したら
ポイントを確認して、基準値(2016年11月現在160ポイント)を超えていたら無条件に永住権の本審査に進めることになる。まずはEOIを出して、IELTSのスコアは取得済か、書類集めをどうするかなどいろいろ確認することが増えて、にわかに慌しくなるだろう。
ちなみに基準値は最近高くなった(以前は140ポイント)が、それなりに日本で職業経験のある人で、NZで同じような仕事に就いていればそれほど厳しくはない。NZでの雇用がなくても、ITなど「非常に不足している」職歴が10年もあれば基準値は超えるのだが、問題はあの「関連のある(Relevant)」の壁であろう。あれのせいで職歴が認められないと、一気にポイントは下がる。
また基準値を切っていても100を超えていればダメ元でEOI申請することはできるらしいのだが、NZで就職していない場合、ほとんど受からないようだ。なのでポイントが足りない人は、どうやってポイントを稼ぎ、基準値を超えていくか対策せねばならない。
その辺についてはまた次回以降、書こうと思います。
関連リンク:
前回のエントリ:ニュージーランド永住権、最初の一歩を踏み出すための基礎知識――これからNZ移民の話をしよう(1)
独立志向で、学歴と仕事が無関係な日本人でも諦めるな!あの手この手で加算できるニュージーランド永住権ポイント――これからNZ移民の話をしよう(3)
通学と恋活と就職活動、長期戦でニュージーランド永住権ポイントを積み増す――これからNZ移民の話をしよう(4)
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