2016年9月8日木曜日

これがたんじゅん農法2.0だ!労力ほぼゼロのたんじゅん畑が登場した!



以前、たんじゅん農法という農法について知ってる限りのことをまとめたことがあった。

農薬も肥料もぜんぜん使わないのに、虫がつかない上に美味しい野菜がよく育つすごい農法なのだが、畑のセットアップがかなり大変な印象もあった。

しかし昨今、これと同じことをビニールシート2種類だけ(!)でやってしまう方法が発見され、各地で実践が始まっている。

今回、なんとバリでその実践をしている畑を見せてもらう機会に恵まれたのであった!(^o^

農園に建つジャワの伝統家屋ジョグロ(オサレ


■セットアップが大変なたんじゅん農法

そもそものたんじゅん農法は最初の畑のセットアップにかなりの労力がかかる。

何が大変って穴掘り!簡単にいえば


  • 畝間を80cmくらいの深さで全部掘って、硬盤層と呼ばれる腐った土の層を壊す
  • そしてそこに炭素材と呼ばれる竹や木材チップのようなものを詰める
  • すると菌が培養され、それが作る栄養で野菜が強く美味しく育つ


というものだが、80cmの深さの穴をお堀のごとく畝間に掘る、というのは簡単な作業ではない。
よほど小さな圃場でなければユンボが必要になるという大掛かりな作業なのだ。

さらに炭素材はときどき補充や入れ替えが必要なので、定期的にユンボも必要となる。
木材チップのためにはチッパーも必要で、それもいいやつだと100万円くらいはするのだ。

■たんじゅん農法の仕組みと新しい方法

たんじゅん農法は要するに土中の微生物(菌)の力で作物を育てるというものだ。
よって微生物を活性化できるならどんな方法でもいい。

また硬盤層はすべて物理的に壊すのではなく、作物に腐敗を吸い上げてもらう。

要するに必要なのは好気菌

この農法の鍵となるのは、糸状菌と呼ばれる好気性の菌だ。
それが野菜を健康に美味しく育てる。

それと関係して、水はけがとても大事。
過去の施肥でできてしまった、腐った硬盤層が水を止め、腐った水がその層上に溜まっていると、好気菌が増えづらい状況を作ってしまう。

同時にその腐った水を野菜が吸い上げることで、窒素分の多い、虫のつきやすい野菜になってしまう。

だからその硬盤層を壊すことで


  • 腐った水がはけていって
  • 好気菌が呼吸できる


ようにして、さらに菌の餌となる炭素材を詰めることで、好気菌を土中に培養するわけだ。

水は大丈夫?

しかし水がそんなにはけていったら水が足りなくなるのではないか?と思ってしまうが、それも大丈夫である。

土中の菌が呼吸する中で空気中の水分を吸い込むので、野菜が育つ上では十分な水分が確保されるのだ。

実際、たんじゅん農法の畑の土はさらさらしていて砂のようにも見える。
しかし実際、そこで野菜がよく育つ。

硬盤層が壊れ、水はけのよくなった畑は土の質が変わり、棒など挿すとずぶずぶと入っていく。
これは農薬や化学肥料でガチガチになった、無生物の土と対象的である。

訪れた畑でも、過去にスイカをやってたとのことで、2、3年前はガチガチのブロックのようだったらしい。
そのせいか前の持ち主の農具の中にツルハシがあったという(^_^;)

好気菌を嫌気菌で育てる

つまり好気菌が増え、土中の腐敗層が無くなればそれでいいわけである。

そのために、新しい方法では


  • まず光合成菌(嫌気性)を増やす
  • それを餌に糸状菌(好気菌)を増やす
  • 土中の腐敗は作物に根を張らせて徐々に改善する


という方法を取る。

新農法の畑

菌の培養ができたら、表層の土の質が変わり、作物が育ちやすくなる。

作物が腐敗を吸い上げる

そこに例えばトウモロコシのような根の深い作物を植え、根が深くなるよう手助けして土中の深いところを耕してもらう。
それによって土中に空気がたくさん入るようになる。

土中が酸欠状態だと腐敗菌が硝酸態窒素を作り出し、それを吸い上げた作物に虫がつく。
それが起こりにくい状況にするのである。

同時に土中に既に存在する腐敗は作物に吸い上げてもらい、虫に食べてもらう。

作物の根に頑張ってもらう

だから初期の作物には虫がつくのだが、表層のほうは少なくとも土壌改善されているので、収穫に耐えないほどに虫がつくこともないと思われる。

ある程度収穫しながら、土壌が改善するのを待つわけである。
なお作物の根が届く範囲の腐敗が完全に消失するには、数回の栽培が必要になると思われる。

収穫の際も、根を全部抜くとよくないので、ある程度深いところで根を切り、下の方は残す。引っこ抜いたりしない。

■資材も労力も最小限!!

上記を実践するため、新しい方法ではビニールシートを駆使して土中に有用菌を培養していく。

新しい方法は陽熱処理と呼ばれ、太陽熱を利用する。
ちなみに日本の冬でも時間をかければできるらしい。

使うのはビニールシートだけ

そしてこれがポイントなのだが、最初の菌を培養している段階で使うのは、なんとビニールシートだけ!!なのである!!

透明シートと遮光シート

さらに腐敗を改善するのは作物なので硬盤層を壊すユンボみたいな重機もいらず!!


これが成長し、根を張り巡らせて腐敗を改善する

そしてここの畑で使う炭素材は見ての通り籾殻!軽く、安く、砕く必要もない!よってチッパーもいらない!!

バリでなんぼでも手に入る炭素材、籾殻

超省力化を実現

元の方法がユンボで畝間をぜんぶ掘り起こし、下にごろんと竹を横たえ、チッパーで砕いたチップを敷き詰め、というものすごい労力を使って畑をセットアップしていたのと比べたら、ほぼ労力ゼロといっても過言ではないレベルなのである!!

また埋めた竹も定期的に掘り出して入れ替えも必要と言う人もいて、そうなるとますます元の方法は大変だ。

新しい方法は誰にでもでき、お金もかからない。
これでちゃんとできるなら本当にこれはイノベーションと呼んでいいのではないだろうか。

ちなみに炭素材は木材チップでもいいのだが、入手が容易で土に混ぜやすい細かいものとなると、バリでは(日本でもだけど)そりゃー籾殻でしょう^^

籾殻はこの土のう袋いっぱいで2万ルピア(約160円)

セットアップにかかる期間

この新しい方法の、元の方法と比べたデメリットは、おそらく時間であると思われる。

元の方法だと重機で硬盤層を一気に壊し、竹を横たえチップを敷き詰め、とやるので比較的すぐに栽培が始められる。
いやひょっとしたらセットアップ後しばらく何かの熟成を待つかもしれないので要確認だけど(^_^;)

新しい方法では作物が育つのを待たねばならないので、やはり時間がかかる。わたくしのようなニート向けの農法であると言えるであろう( ̄▽ ̄

各工程にかかる時間だが、


  • まず光合成菌を培養するのに2ヶ月
  • 糸状菌を増やすのに1ヶ月
  • その後、播種して収穫するまで、作物次第だが3ヶ月程度


となる。

最初の収穫まで約半年かかり、さらに作物の根によって土中が耕され腐敗が消失していくにはもう半年くらいかかりそうである。

目が離せないたんじゅん農法2.0

訪れた畑ではとりあえず播種して1ヶ月くらいで、最初の収穫を待っている状況だった。

予想だが、初回は菌のおかげで作物がよく育つが、土中に腐敗はまだ残っているので虫はつく、という状況になるのではないかと思っている。

しかしまだ最初の土づくりまで来たところなのだが、明らかに土の質が変わっていてかなり期待大。
今後も目の離せない、たんじゅん農法2.0(俺命名)である!(^o^

次回以降、より具体的な方法論についてレポートするのでしばし待て!!


その他のたんじゅん農法情報はこちら

これがたんじゅん農法2.0だ!実践編(1)微生物を培養せよの巻
たんじゅん農法2.0、実践編(2)根っこをお世話し、水はけを対策するの巻
たんじゅん農法2.0、実践編(3)畑との対話が始まる
持ちこたえることと本質的な対処と、それを支えるもの
Farming Top - earthlab(外部リンク)


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1 件のコメント:

  1. これを日本でやる場合について:
    ・雨が難しい
    ・高冷地の冬場でも2ヶ月で70センチくらいは棒が刺さる
    ・夏だとその半分以下でできる
    ・水の流すところのない窪地は、ビニール剥ぐとまた戻ってしまうので時間がかかる
    ・ハウスや斜面地であれば1回である程度硬盤層が崩落する
    ご参考!\(^o^)/

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